こんな症状で困ったら‥‥
下痢が止まらない!
まず、数日前から急に下痢に変わったという場合と、もう何か月・何年以上前からいつトイレに行っても下痢をしている場合に分ける必要があります。
前者は細菌感染またはウイルス感染による感染性腸炎と考えられます。異物を除外する反応が下痢ですので、下痢は止めてはいけません。出ていく水分・ミネラルをスポーツ飲料などで補給して身体の水分バランスが崩れないようにすることが重要です。
後者は慢性下痢であり、様々な原因で起こります。
1)過敏性腸症候群:
便意を催すたびにお腹が痛くなり、排便すると痛みが楽になる‥‥、こういった症状が3か月以上続いている、というのがこの疾患の定義です。心理的なストレスの影響の大きいとされています。
一般薬としてはイリボー®、便をゲル状に固めるポリフルなどがあり、漢方薬では桂枝加芍薬湯が第一選択です。
2)炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など):
腸管の炎症で水分吸収ができなくなり、便を固められなくなります。いつも水様~泥状の便ですが、ほとんどのケースで腸管出血をするので、下血で便器が毎回赤くなります。腹痛や発熱を伴う場合もあります。元々固まった便だったのに、数か月前から下血が続けて見られる‥‥、大腸内視鏡による観察と必要なら粘膜からの生検(組織を採取して顕微鏡検査に提出する)を行います。診断基準を満たすと確定診断に至ります。重症度によって治療薬は様々です。投薬でコントロールできることが多いですが、重症・劇症型では緊急手術になることもあります。
20-40歳代に多くみられる疾患ですので、便が固まらなくなって、便器も赤くなる出血がみられるようなら、受診されることをお勧めします。
3)慢性下痢症:
もう何年もいつも下痢‥‥、でもお腹も痛くないし、血液もまじらない、体質が大きく影響しています。
一般薬にはロペミン、ポリフルが便を固める薬です。あまりよい薬がありません。私自身は体質からきている慢性下痢は、体質を変える必要があると考えて、漢方薬で治療することが多いですね。真武湯、人参湯、大建中湯などを使います。効果がすぐに表れる方もおられますが、下痢に悩んでいる期間が長ければ長いほど、効果を実感できるのは時間がかかります。
一つの漢方薬は最低でも4~6週間服用して、どんな些細なことでも変化がなかったか、自分の身体を観察しましょう。下痢以外に何か少しでもよいことがあれば、それは体質改善の証ですので、そのまま服用を継続すれば下痢もよくなる可能性があります。
長年続く下痢は改善させることが難しいことも多いです。その場合はお困りの症状を取り除くことが主体になります。例えば、高齢になるにつれ、肛門の締める力がどうしても弱くなっていきます。便意を催してすぐにトイレに行けないと下痢を漏らしてしまう、こういう場合は便を強制的に固めるポリフルも効果的なことがあります。ロペミンは気を付けないと硬くなって便が出なくなるので、他の薬ではどうにもコントロールできない場合に使うようにしています。