こんな症状で困ったら‥‥
便秘がひどい!
便秘は年齢とともに増えていきます。高齢になると男女の差はなくなります。
もちろん、「水分をしっかりとりなさい。」、「野菜をたくさん食べなさい。」、「運動をしてますか?」、「ヨーグルトなんかもいいですよ。」‥‥。ただ、この通りやっても一向に便秘がよくならない方がほとんどではないでしょうか。
ただし、”毎日ウンチがでていないから自分は便秘だ。”とか、”若い時はキチンと毎日ウンチがでていた。”、”毎日ウンチを出さないと気が済まない。”といったことは、少し考えなおす必要があります。
私はウンチは毎日出す必要はない!と考えています。排便がないことで、”お腹が痛い。”とか、”お腹が張って苦しい。”といった症状がある場合に便秘と考えて、治療する対象になると考えています。
生活習慣を整えてもうまくウンチがでてこない場合には、お薬の力を借りて便秘の治療をしていくことになります。
1)ウンチが硬くて出せない!:
岩のように硬い塊の便を、必死に気張って出している場合には、酸化マグネシウムを使って軟便に調整することをお勧めします。ご高齢で腎機能低下がある人には出しにくい、いくつかの薬と相性が悪いなどといった問題もありますが、副作用が少なく、古い薬なので安いのです。便秘は長くつきあう病態ですから、あまり高価な薬はできるだけ避けたいものです。
2)ウサギの糞のようなコロコロと小さな便で出すのが大変!:
コロコロ便は一番出しにくい便の形です。いきんでコロコロ便の隙間をつぶして、さらにいきまないと便に力が加わりません。困っている方の多い便の形です。当院ではコロコロ便には麻子仁丸という漢方薬で対処しています。よく効いてくれるので重宝しています。
漢方薬には、麻子仁丸の他、効果の異なる便秘に有効な処方がいくつもあります。漢方薬も多くが安価なこと、やさしいものから順に強めのものへ変えていけることから、当院では結構処方しています。
3)毎日寝る前に下剤を飲んで出している。下痢になったり、お腹が渋ったりする。:
センナを含む刺激性下剤は大腸の神経に作用して、大腸の動きを強くするお薬です。ヒトによっては動きが強くなりすぎて下痢になったり、お腹が渋って痛くなったりします。そういう症状のない方は上手に使えばよいと思います。
ただし、注意していただきたいことがあります。毎日連用して何年もたってくると、下剤の効果が弱くなり、だんだん服用するお薬の量が増えていくことがあります(=耐性)。ベースは酸化マグネシウムや漢方薬で便通を整えて、3-4日でない場合に頓用で刺激性下剤を使うと耐性がつきにくくなります。
便秘は長く続く病態です。10-20年先を見据えてお薬は選択したいものです。
4)浣腸したら出るんだけど‥‥。:
浣腸によるトラブルで受診される方がおられます。身体の姿勢で肛門から直腸に向かう角度が変わるためです。一番良いのは横を向いて寝て、膝をお腹にしっかりと近づけるような姿勢で浣腸をすることです。身体のラインと太もものラインが強い鋭角になるようにしてください。これによって肛門から直腸への角度が直線に近くなります。
便座に座って”考える人”の銅像のように、しっかりと身体を前に倒すようにするのもよいと思います。
一番悪いのは立ったまま行うことです。これでは肛門から直腸への角度が直角に近くなり、浣腸のチューブを入れたときに直腸の壁を強くこすって、粘膜損傷をしてしまい、多量出血をきたしてしまう恐れがあります。便座に座って身体を後ろ側にそらして浣腸をするのもよくありません。
結構あるトラブルです。浣腸液の代わりに、重曹座薬で炭酸ガスを発生させて、浣腸と同じような効果が期待できるレシカルボン座薬というのもあります。
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5)最近発売された便秘治療薬はどんな時に使うのか?:
主に重症便秘に使用する薬剤です。上で述べた方法でもうまく排便がコントロールできない、便秘上級者に使用します。初めからこれを使うと強烈な下痢に襲われます。
一番使いやすいのはポリエチレングリコール製剤でしょうか。欧米ではずっと以前から便秘薬のファーストチョイスとして知られましたが、日本で使えるようになったのは2018年になってからです。2歳以上の子供さんにも使える安全性がいいですね。長い間便通がうまくコントロールできなかった方には結構喜ばれるお薬です。
強い作用をもつ薬剤が3種類程度あります。それと漢方薬を併用することもしています。
便秘は長く付き合わないといけない病気です。ですが、酸化マグネシウム・刺激性下剤・様々な漢方薬に加えて、新規の便秘治療薬がでてきて、ラインアップが充実してきました。自分に合うのはどの薬なのかは、実際にいろいろ試行錯誤を重ねないと答えにはたどり着けません。
ご一緒に快適な排便ライフになる方法を探しませんか?