こんな症状で困ったら‥
排便したら出血した!
いつも通りにすっきりと排便して、何気なく目線を下に落とすと、「便器の水が赤い!」。紙で拭いたら、「これって血がついているの?!」。
何か大きな病気が自分の身体の中で始まっているの?、心配になりますね。
どんな病気で排便するときに出血するのでしょうか。
食べたものが口から入って、食道・胃・小腸・大腸を通って最終的に肛門からウンチが出来るわけなので、排便時の出血はこの経路(=消化管)に原因がありますね。ただし、食道や胃などのからの出血が残りの消化管を通るうちに血液の赤い成分が変性してしまうので、真っ黒いタールのような色に変わっています。目で血液だとはっきりわかるのは、大腸、肛門からの出血と考えられます。
1)肛門からの出血:
おそらく一番多いのが肛門からの出血です。痔核(いぼ痔)、裂肛(=切れ痔)からの出血は鮮やかな赤い色をしています。
詳細は”いぼ痔のページ”、”いぼ痔以外の肛門の病気のページ”をご参照ください。
2)大腸がん(結腸がん、直腸がん):
私たち肛門医は、肛門出血と言って受診される方々の中に、必ず大腸がんが潜んでいると考えて、日々の診療を行っています。50歳以降、特に60歳以降で、大腸内視鏡をしたことがない、していても5年以上前といった方々には、肛門疾患の治療をしながら、大腸内視鏡検査を勧めるようにしています。
いぼ痔の出血と決め打ちして、大腸がんを見逃すことだけはどうしても避けたいものです。
ほとんどの大腸がんは症状が出ません。治る段階で治療するためには、最低限大腸がん検診(便潜血検査)を1年に1度、できれば3-5年に一度の大腸内視鏡検査を行うことをお勧めします。
3)炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病):
10代から20代といった比較的若い世代に多い難病指定の病気です。特徴は下痢があり、便も下血の状態になります。これまで形のある、便だったのに、最近下痢ばっかりで、血液が混じるようになってきた‥。大腸内視鏡による検査が必要です。クローン病は下痢を起こす前に痔瘻で発症することもよく知られています。
4)その他の病気:
高齢者が左の下腹を痛がり、その後血便が見られた‥、虚血性腸炎という疾患があります。また、大腸憩室からの出血も多くはありませんが、高齢者では念頭に置く必要があります。東南アジアなどへの旅行後であればアメーバ赤痢の持ち込みもあります。
上記の他にもさまざまな病気で排便時出血は起こります。ネットでいろいろ調べて悩むよりは、消化器内科を受診されて診察を受ける方が診断への早道だと思います。